封印としての『ライディーン』

 
 明日からラガーのCM曲としてお茶の間にも流れる『ライディーン』だが、やはりYMOといえばこれが代表曲だということに異論がある人はいないだろう。
 それゆえ、1983年の散開(解散の意)後この曲の扱いにメンバーは苦慮していたように思う。他のYMOの楽曲は各自のソロ活動でも時折カバーされているが、ライディーンだけはかなり微妙な使われ方をしている。
 
 まず1993年の再生時。ライブでの演奏曲はニューアルバムが中心で、YMO時代の曲はほとんど演奏されなかった。オーディエンスはライディーンテクノポリスがいつ出るのかとやきもきしていたが、結局ライディーンは出だしの部分をチョロっと演奏しただけであった。
 
 次は2000年にNHK-BSで放送された『細野晴臣イエローマジックショー』に於いて公の場で3人揃った姿を久々に見せてくれたが、皆おじいちゃんの扮装をしたコント仕立てであり、ライディーンも演奏されたが使用されたのは「おもちゃのような楽器」であった。
 
 その次は2003年のスケッチショウのライブで、これもサンプリングでライディーンの冒頭部がちょっとだけ(2音だけ!)使われた。それでも観客は大歓声。
 東京公演では坂本龍一もゲストとして出演しており、演奏後MCで「ライディーン、ですね・・・」みたいなことを照れながら言っていた。
 
 ライディーンを真面目に(という表現もおかしいが)演奏するとファンによる再結成への期待が過剰に高まることを慮って、小出しというか「サーヴィス」というかおそるおそるというか、そういう扱いにせざるを得ない状況であったように思う。
 
 今回のキリンラガーのCMでは「YMO」という看板と共にライディーンを演奏しており、そういう意味でもひとつの封印が解けたのではないかという見方をしているのだがどうだろうか?
 確かにアレンジはおとなしめであり、CMでも原始人のコスプレや沖縄の民族衣装を着たりと「おふざけ」(*1)の要素はあるが、メンバーがYMOに対するわだかまりを捨てて次のステップに進むための契機であると、ファンとしては最大限の希望的観測を含めてそう信じたい。
 
 
 
 [RYDEEN 79/07 オフィシャルサイト] http://rydeen79-07.com
 

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(*1)YMOの「おふざけ」好きは今に始まったことではない。80年代には音楽番組への出演を断りつつ「ザ・マンザイ」や「オレたちひょうきん族」に嬉々として出演、1993年の再生時にはとんねるずの番組にて全員黒タイツ姿の「モジモジ君」になって暴れていた。他にも前述の『細野晴臣イエローマジックショー』での老人コスプレや、坂本龍一ダウンタウンの番組で演じた「アホアホマン」やダウンタウンとの漫才、ライオンの着ぐるみ(浜田に崖から蹴落とされる)など枚挙にいとまがない。